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2025.10.08

板金加工の曲げとは?仕組みや種類、設計・外注時に知っておきたいポイントを詳しく解説

「曲げ加工」は、板金加工に欠かせない重要な工程のひとつです。

製品の強度や精度を左右する重要な工程ですが、「どのような加工方法があるのか」「設計段階の不具合や精度の低下をどう防げばいいのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、曲げ加工の基本から代表的な加工方法、そして設計や外注時に押さえておきたいポイントまでをわかりやすく解説します。

板金加工を外注したい設計者・調達担当者の方はもちろん、基礎知識を整理したい技術者の方にも役立つ内容となっています。

板金加工の「曲げ」とは?

「曲げ」と呼ばれる板金加工は、金属板に角度や形をつける基本的な技法です。

製造の現場では、部品を立体的に成形したり、筐体やブラケットを製作したりする際に欠かせません。

曲げ加工の原理を理解することは、設計段階でのトラブルを防ぐだけでなく、外注時の指示や現場指示を行う際にも役立ちます。

ここではまず、曲げ加工の仕組みや対応できる材質などを解説します。

曲げ加工の基本的な仕組み

板を曲げる仕組みはとてもシンプルです。

板の両端を支え、中央を直角方向に押すと、外側は伸び、内側は縮みます。

このときに働く力を「曲げモーメント(M)」と呼び、荷重(押す力)と支点までの距離を掛け合わせて計算します。

つまり、支点との距離が大きいほど、曲げモーメントも大きくなるという仕組みです。

そして、曲げ加工では、この「距離」の設定が非常に重要です。

距離が大きすぎると、幅の狭い板がV溝に落ちてしまい、逆に小さすぎると板が曲がって不具合が生じます。

一般的なV曲げ加工では、ダイの肩幅を「板厚の8倍」とするのが標準で、この値を基準に加圧力を計算します。

こうした基本原理を理解しておくことで、曲げ加工の限界や注意点を把握でき、設計や外注依頼の際に正確な指示が可能になります。

曲げ加工に対応できる材質

曲げ加工で使われる金属板は、大きく分けて鉄鋼材料(鉄やステンレスなど) と 非鉄金属材料(アルミニウムなど) に分類されます。

ここでは、代表的な3種の素材それぞれの特徴と注意点を解説します。

鉄材

鉄材は適度な硬さと弾性を持った、比較的曲げやすい素材です。

価格が安く汎用性が高いため、板金加工で最もよく使用されます。

ステンレスやアルミに比べると錆びやすく装飾性に劣りますが、加工後にメッキを施すことで補うことが可能です。

一般的にはSS材(一般構造用圧延鋼材)を使用し、強度や硬度が求められる場合はSC材(炭素鋼鋼材)を選びます。

ステンレス材

ステンレスは鉄に比べて曲げ加工が難しいものの、錆びにくく、硬く、見た目の美しさも保てる素材です。

一方で、材質の種類によって硬度や弾性が異なるため、それに合った加工方法を選ぶ必要があります。

熱伝導率が低いため、加工中の熱で割れたり、工具が欠ける原因になったりする場合もあるので注意が必要です。

また、スプリングバック(元に戻ろうとする反発)も大きいため加工時の補正が欠かせません。

アルミニウム材

アルミニウムは軽量で錆びにくく、柔らかいため曲げ加工しやすい素材です。

しかし、鉄やステンレスに比べてじん性(粘り強さ)が低いため、クラック(ひび割れ)を防ぐ工夫が必要です。

また、弾性が高いため、スプリングバックへの調整も必要になります。

曲げ加工で使われる機械

曲げ加工で最も広く使われているのが、「プレスブレーキ(ベンディングマシン)」です。

「曲げ機」とも呼ばれており、上下に動くパンチ(上型)を、金属板を支えるダイ(下型)に押しつけて、V字やL字などの形に加工します。

操作は通常、油圧や電動モーターで行われ、目的の加工に合わせて加圧力、曲げ角度、曲げ速度を調整していきます。

近年のプレスブレーキはNC制御に対応しており、加圧量や曲げ順序を自動で計算・調整できます。

そのため、複雑な形状でも安定した品質で加工できるのが大きな特徴です。

なお、「プレスブレーキ」と「ベンディングマシン」は呼び方の違いであり、いずれも板金を曲げる同じ機械です。

板金の曲げ加工の種類

板金の曲げ加工には数多くの方法があり、用途や求められる品質に応じて使い分けられます。

V曲げ

V曲げは、V字形のパンチで板材を押し曲げる基本的な加工方法です。

金型構造がシンプルで、さまざまな角度や形状に対応できるため、幅広い板金加工で採用されています。

90度以外の角度にも成形可能ですが、板材を固定しない場合は成形品の飛び出しや腰折れ(曲げの根本が支点とは反対方向に反り曲がってしまう現象)に注意が必要です。

V曲げには、以下の3種類があります。

  • パーシャルベンディング
  • ボトミング
  • コイニング

用途や求められる精度に応じて、適切なV曲げの方法を選ぶことが重要です。

パーシャルベンディング(自由曲げ)

V曲げの一種であるパーシャルベンディングは、パンチを途中で止め、曲げ角度を自由に調整できる加工方法です。

そのため「自由曲げ」とも呼ばれており、ひとつの金型で幅広い角度に対応できるのが大きな特徴です。

ただし、曲げ角度の精度は比較的低く、スプリングバックの影響を受けやすいです。

「パーシャル(partial)」とは「部分的な」という意味で、パンチと金型の3点(A・B・C)で曲げることからこの名称が付けられました。

ボトミング(底突き曲げ)

ボトミングは、パンチを金型の底まで押し込み、V曲げを完成させる方法です。

「底突き曲げ」とも呼ばれ、低い圧力でも安定して成形できるため、幅広く利用されています。

また、パーシャルベンディングと合わせて 「エアベンディング」 と呼ばれることもあります。

エアベンディングは、最も一般的なV曲げ加工方法として多くの現場で採用されており、小さな加圧力でありながら高い精度を確保できます。 

コイニング

コイニングは、パンチを材料に強く押し込み、非常に精密で均一な曲げをつくる加工方法です。

高い寸法精度が求められる製品に適しており、仕上がりの美しさや再現性にも優れています

一方で、ボトミングの 5倍以上の圧力 が必要になるため、金型の摩耗が早いというデメリットもあります。

そのため、コストや金型寿命とのバランスを考慮して使い分けることが重要です。

ちなみに名称である「コイニング(Coining)」は、コインの製造工程に由来しています。

L曲げ(押さえ曲げ)

L曲げは、板材を押さえながらパンチで押し付け、直角(L字)に曲げる加工方法です。

その工程から「押さえ曲げ」と呼ばれることもあります。

加工中に材料が固定されるため、V曲げに比べて形状が安定しやすいのが大きな特徴特長です。

さらに、V曲げでは扱いづらい長尺と呼ばれる1m以上の板材にも対応可能で、寸法精度や安定性を重視する部品の製作に適しています。

U曲げ(逆押さえ曲げ)

U曲げは、パンチと逆押さえ(パッド)を同時に使い、板材をU字に成形する加工方法です。

「逆押さえ曲げ」とも呼ばれます。

パンチでの曲げを逆押さえが支えることで、U字の両端を一度に曲げられるのが特徴です。

専用の金型が必要なため汎用性は高くありませんが、角度の精度が安定しやすく、作業効率を向上させられる点がメリットです。

その他の曲げ加工

板金加工では、製品の形状に応じてさまざまな曲げ加工が用いられます。

複数の加工方法を組み合わせることで、複雑な形状の製品を作ることも可能です。

主な加工方法は以下のとおりです。

特徴
Z曲げ(曲げ戻し)板材をZ字型になるように成形する方法です。使用する金型や板の大きさによって、いくつかの曲げ手順が存在します。
R曲げ(ラウンド曲げ)丸みを帯びたパンチを用いて板材をアール状に加工します。専用の金型だけでなく、V曲げ用の金型でも対応可能です。
O曲げ(円筒曲げ)板材を360度曲げ、円筒の形に仕上げる加工です。複数回の工程を経て完成します。
ヘミング(つぶし曲げ)板の端部を180度折り返して加工する方法です。自動車のドアやボンネットの縁処理によく用いられ、安全性と見た目の仕上がりを向上させます。
押さえ巻き曲げ板材の端を押さえながら折り曲げる加工方法です。フォールディングマシンと呼ばれる専用機械などを使用します。型曲げと比較すると、材料に傷がつきにくい利点があります。
送り曲げ(ピッチ曲げ/FR曲げ)板材を少しずつ前へ送りながら、段階的に曲げていく手法(Feed and Repeat/フィードアンドリピート)です。頭文字を取ってFR曲げとも呼ばれます。
フランジ成形板の縁に「フランジ」と呼ばれるつばを形成する加工です。自動車ボディの曲面部品などに多く使われます
バーリング加工板材に立ち上がり付きの穴を作る加工で、まず下穴を開けたあとパンチで押し込みます。ネジ穴や軸受けに活用でき、「突っ切りバーリング」という方法もあります。
カーリング加工板の端を小さく丸める加工方法です。専用の金型を使用することで、見た目を整えるだけでなく、強度の向上にもつながります。

板金の曲げ加工で知っておきたいポイント

板金の曲げ加工は、ただ板を曲げるだけではありません。

素材の特性や加工の限界を理解しておくことで、設計段階の不具合や仕上がり精度の低下を防ぐことができます。

ここでは、特に重要なポイントを解説します。

材料特性を理解する

各材料は硬さ・弾性率・厚さ・曲げ半径の許容範囲が異なるため、それに応じた設計が必要です。

たとえば、鋼板は硬く割れやすいので曲げ半径を大きく取る、アルミは柔らかいが腰折れしやすいので適材適所の設計が求められます。

曲げ半径の適切な設定

曲げ半径とは、曲げの内側の湾曲の半径のことで、曲げ加工における重要な設計パラメータです。

曲げ半径が小さすぎると割れやひび割れの原因になり、大きすぎると部品強度や形状精度に影響します。

スプリングバック(戻り現象)への対策

曲げ加工では、板材が元の形に戻ろうとする力「スプリングバック」が発生します。

その結果、加工後の角度が広がり、設計どおりの精度が出にくくなることがあります。

スプリングバックが起こりやすい条件は以下のとおりです。

  • 素材の引張強度が高い場合
  • 板厚が薄い場合
  • 曲げ角度が小さい場合

これを防ぐには、

  • 一度で曲げずに複数工程に分けて加工する
  • 予測される戻り量を見越して角度を小さめに設定する

といった対策が効果的です。

これらを踏まえることで、精度の高い仕上がりを実現できます。

曲げ加工には限界がある

曲げ加工には大きく分けて「ダイの溝幅による限界」と「金型干渉による限界」の2つがあります。

ダイの溝幅は、加工する板厚に応じた適切な幅が必要です。

溝幅が狭すぎると、板材が反ったり曲げ傷が深くなったりするため、寸法精度や仕上がりに影響します。

また、金型の干渉によって、加工できる範囲が制限されることもあります。

代表的な制約として、最小曲げ高さ・穴から端までの長さ・穴から折り曲げ線までの長さなどがあります。

これらの限界値は、設計内容や加工メーカーごとに異なります。

正確に判断するには、ヤゲンの断面形状シートやリターンベンドの限界グラフを参照し、事前に加工可能かどうかを確認することが大切です。

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まとめ

板金加工の「曲げ」には、V曲げ・L曲げ・U曲げなど複数の方法があり、材質や形状に合わせて最適な加工方法を選ぶことが重要です。

 また、加工にはスプリングバックや溝幅や金型による限界といった制約があるため、設計段階で理解しておくことが高精度な製品づくりにつながります。

外注先を選ぶ際には、加工技術だけでなく、設計サポートや一貫対応の体制を持つ会社を選ぶことで、試作から量産までスムーズに進められるでしょう。

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